AZOTH -Interview-

by Masahide Watanabe
2022.03.04 | NEWS

仙台市中心部から東へ4kmの卸町に社屋を構えるデザインファクトリー『AZOTH』(@azoth_designfactory)

AZOTH -Company Tour-」の他にも、今回は『AZOTH』さんのこれまでの歩みや、印象に残っている物、これからについてなどインタビューをさせて頂きました。
今回、話をしていただいたのは、AZOTH アパレル部 部長の「平野 友也」さん。
平野さんは、主にグラフィックなどのデザインを担当されており、以前は東京オフィスにも勤務。
私物のTシャツを交えながら、質問などにお答えいただきました。

 

AZOTHさんのこれまでの歩みを教えて下さい。

2004年に法人化しました。活動自体はそれ以前からしていたんですが…
僕が入社したのはその翌年の2005年。その当初はスタッフが5人、学生のバイトが数名の少人数でした。
そこから数年間は24時間での作業体制で、とにかくひたすら製版して、プリントをしてを繰り返していましたね。
デザイン部ができて、グラフィックやアパレルOEMをするようになりました。
(OEM : ブランド製品の製造委託のこと)
2010年にはイオン出店したり、東京にオフィスを開設したり(現在は共に閉店)、2011年には東日本大震災で工場全壊をしまして、それもあって宮城野区に移転、2019年には台風被害などもあり、2020年にここ卸町に戻ってきて、デザイン工務店「T-plan」とオフィスシェアした今の形になりました。同時に一番町にeスポーツ施設「BASARA」も開業しました。

 

この仕事のやりがいや、こだわり、大切にしている事を教えて下さい。

やっぱり、AZOTHが携わった物が売れるというのがやりがい。
そして、全国の同業者との「つながり」を大切にしています。
ライバル視はしていなくて、情報交換をしたり、一緒に食事をしたり…
「餅は餅屋」なので、うちより秀でてるとこは部分的に手伝ってもらったりしています。

 

AZOTHと他プリント工場との違いはありますか?

東北・関東では少ない水性ベースのプリントをしているところですかね。
あと、プランナーが多いので広範囲でのマーケットを受注できていることで、好きなカルチャーのTシャツの案件などもやっていること。
また、関連会社も多いので多角的にビジネスが出来る事で、コロナのような事態も対応できたことも大きいです。
デザイン部があるというところも他にないところ。
話題の映画や、国民的アニメ、ライセンス商品のディレクションをしてる。
だから、プリント屋の観点からリスクを予測して、企画に参加し、MDを組んで、デザインを起こして、製造から納品までさせてもらってます。

 

歴史あるシルクスクリーンプリントですが、現在までで一番進化した事はなんでしょうか?

昔も今もシルクスクリーンプリントの原理は何も変わってないです。
いまだに、古典的な手作業で製版して、手刷りもしている。取り巻く環境だけが変化してますね。
スマホやLINE、Photoshop、データ便、撮影機能とか。大量の書類を持ち歩いていた当時より、とにかく身軽になりました(笑)

 

現在ではどのようなプリントの種類が可能ですか? また、今後試そうとしている技法はありますか?

プリントは色々な種類を試してきました。成功も失敗も沢山してきました。
「目立てば良い」って訳ではなくて、プリントはあくまでもデザインの1要素。
なので、ここ5年はもっぱら染み込みプリントと、ラバープリントに落ち着いています。結局それが一番売れますし。
やっぱこれが原点であり、頂点なんだと実感しますね。

 

 

アパレル以外でシルクスクリーンプリントを活用した実績はなんでしょうか?

音楽フェスとか、学校の授業などでたまにワークショップをやっていました。
15年前にはやっていたんで、他社と比べると割と早い段階で行ってました。

 

今までプリントしてきた中で、特に印象に残っている物はなんでしょうか?

『RIE SATO PARIS』というヤバいプリントを手掛けるブランドですかね。
ググっても情報がかなり少ない、つまりほぼ発表してないんですが….(笑)
21年には黒ボディへのスポットカラーセパレーション11版手刷りをしました、 マーケットを完全無視したスクリーンプリントのマニアへむけたTシャツですね。
12年にもNIRVANAカートコバーン追悼TEEをモチーフにしたプリントもしました。
廃盤になったアメリカインクの風合いを出すため色々と調合しながら手掛けました。
プリントに至るまでの実験、調査、データ処理、配合…etc とにかく強烈でした。
あと、「JOJO×AZOTH 七夕祭り in S市社王町Tシャツ」や「スワロウテイル20周年Tシャツ」も印象的でした。
様々な人やシーンを巻き込んだ展開となり、非常に思い出深いTシャツです。

 

依頼してから製品が完成するまでの流れや、お客様とどういったやり取りをするのか教えてください。

近年の社会情勢により、ほぼリモートやメールでの受注に移行しています。
流れはとてもシンプルで、「実寸データ」と「ボディの内訳」をメールか何かで貰えれば全て解決します。
それに対して、状況を踏まえた最適なプランを返信したり、ボディとかもAZOTHの方で手配出来るので決められない方にはカタログを送ったりしますね。

 

プリント作業は「裏方」として認知されていましたが、今後プリントスタジオとして運営する動きを考えていますか?

表立って会社の名前が出たりとか、自分の名前が出たりとかっていうのは今後もないかと思います。
つくづく思っているのは、プリントだけに特化しないこと。グラフィックや二次加工、素材選定やコストの相談、スケジュール管理などのTシャツのトータルプロダクションになれればいいと思っています。もちろん、裏方としてですけど。

 

これまで多くのボディにプリントされてきたと思いますが、好きなボディなどはありますか?

90年代のボディは味があって、良いボディブランドが沢山あった。古着とかもそうですが、90年代の物にハズレは無い印象です。
プリント屋としても、ああいった定番が復活すると良いなと思っています。
丸胴仕様で、アームホールが広くて、作りも荒くて。大量生産や品質不良は「悪」って風潮があるけれど、逆にそういう当時のボディって良いんです。
昔集めていた物が行方不明になったんで、アラフォーになってまた買い直しています。大金をはたいて・・・(笑)

 


「実際に平野さんが私物のヴィンテージTシャツを沢山持ってきてくださいました。1番好きなものは”シルクスクリーンの神様”アンディウォーホールTシャツとの事。また、この取材時に平野さんが着用していたパーカーは昨年話題にもなった”スワロウテイル×LABRAT”のパーカーです。」

 

ボディによって、プリントの仕方などが変わったりするのでしょうか?

繊維や生地にも個性があるので、それを踏まえてプリントデータを調整することは多々あります。
また、ボディブランドによって経年変化も違ったり、染め方も違ったりします。洗濯後に濡れたまま放置しておくと色移りしたりとか。
そういった、あらゆるデメリットを洗い出して、その後プリントのやり方を決めていきます。

 

最後に今後のビジョンを教えてください。

ハード面では、プリント設備や人員をガンガン導入したりはしないです。
ソフト面では、テクやノウハウ、センス、レシピ、デザインを高めていくファクトリーにしたいです。
これからの時代は色々と垣根が無くなるのでそっちの方が大事だと思います。

 

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